医療機関の概算経費の特例について

医師又は歯科医師の所得税の計算にあたっては、実際にかかった経費によらずに、概算によることが認められています。基本的には保険診療を行っている医療機関が対象となり、自由診療のみの医療機関は対象外です。

 

概算経費の特例は、

①社会保険診療報酬が年間5,000万円以下であること

かつ

②自由診療を含めた診療報酬が7,000万円以下であること(平成25年度の税制改正により新たに要件に加えられました。)

が条件となります。

具体的な概算経費金額は以下の通りです。

一年間の社会保険診療報酬合計額A 概算経費金額
2,500万円以下の場合 A×72%
2,500万円を超え3,000万円以下の場合 A×70%+50万円
3,000万円を超え4,000万円以下の場合 A×62%+290万円
4,000万円を超え5,000万円以下の場合 A×57%+490万円

 

保険診療だけでなく自由診療を行っている医療機関については、保険診療および自由診療に共通する経費を、自由診療についてかかった経費として按分しなければなりません。

按分割合を自由診療割合といいますが、自由診療割合の計算は、

①診療日数による方法

②収入による方法

があります。

②による場合は、以下の調整率を乗じる必要があります。

診療科目 調整率
眼科・外科・整形外科 80%
産婦人科・歯科 75%
上記以外(美容整形を除く) 85%

 

なお、医療法人にも概算経費の特例はありますが、医療法人化する医療機関は社会保険診療報酬が上記の基準を超えることが多く、また院長自身の給与も経費にできることから、適用事例はあまり多くありません。以上をもとに、基本的には毎期確定申告の際に比較を行いますが、主として開業初年度や軌道に乗るまでの期間に適用されることが多いです。これは、一般的には同額の原価をもとに医療サービスが行われたとしても、自由診療の方が収入単価が大きくなるためです。

 

なお、平成25年度の税制改正の概要(厚生労働省)によれば、将来的に概算経費の特例は廃止される可能性もあります。

最新の税制にご留意下さい。