相続時精算課税の活用

相続対策として、相続時精算課税制度が採用されることがあります。
相続時精算課税制度とは、60歳以上(贈与した年の1月1日時点において)の者が、20歳以上(贈与された年の1月1日において)の子や孫に対し財産を贈与した場合において、贈与財産の価額について2,500万円までは贈与税がかからないという制度です。贈与は1年間ではなく、複数年に渡っていても問題ありません。


その上で、相続が発生した場合には、改めて贈与財産を相続財産に加えて相続税を計算するというものです。すなわち、税金の支払を先送りにすることができます。あくまで先送りなので、あまりメリットがないという考え方もできますが、有効活用することにより節税の手段として利用できます。
具体的には価格が上昇するような資産については、相続時精算課税を適用することにより相続税の節税効果が見込めます。というのも、相続発生時には贈与時の価額で相続財産に合算されるため、相続時と贈与時の価額の差に税率を乗じた分(税率が変わらないと仮定すると)、節税になるためです。
また、投資不動産のように、収益を生む財産であれば贈与することにより、親が受け取っていた毎月の家賃がその後は子に帰属することになり、その分贈与者の財産の増加を防ぐことができ節税につながります。
ただし、相続時精算課税制度は一度採用すると通常の暦年課税(1年間で110万円までの贈与については非課税となる制度)に戻すことはできなくなるため、慎重な判断が必要です。

親子で運営されている医療法人の場合で、親がクリニックの物件を所有していて、医療法人に賃貸しているケースを例にとると、相続時精算課税を利用した子への贈与を行うことが考えられます。さらに、MS法人が存在する場合には、子からMS法人へ物件を売却することで経費をコントロールでき、全体として節税につながることもあります。
一度、相続対策として相続時精算課税制度の活用も検討してみてはいかがでしょうか。