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税務

【令和4年度税制改正大綱】

令和3年12月10日、自民・公明両党により令和4年度税制改正大綱が公表されました。

税制改正大綱は、あくまでも税制改正案ではありますが、政権与党(自民党・公明党)により取りまとめられたものであり、ほぼそのまま可決されることが多いものです。

 

主な内容は以下の通りです。

 

<基本的考え方>

・「成長と分配の好循環」の実現に向けて、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化する。
・スタートアップ企業を徹底支援するために、オープンイノベーション税制の拡充を行った上で、2年間延長する。
・わが国は急速な人口減少局面を踏まえて、東京一極集中を是正する観点から、地方拠点強化税制について見直しを行った上で、2年間延長する。
・5G全国ネットワークの整備を推進するために、5G導入促進税制について、対象となる設備やインセンティブ等の見直しを行った上で、3年間に期間を限定した上で延長する。
・カーボンニュートラルの実現の観点から、住宅ローン控除において、認定住宅については引き続き、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅については新たに優遇する。また、住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回る状況が生じているとの会計検査院の指摘を踏まえて、控除率や合計所得金額の要件の見直しを図る。
・コロナ禍における給付金の支給や融資に際し、適切な記帳を行っていない中小・小規模事業者が多く存在したことから、手続きが滞るといったことが散見された。そこで、所得税の青色申告制度の見直しを含めた個人事業者の記帳水準向上等に向けた検討を行うものとする。
・経済社会の構造変化に伴い、外形標準課税の対象法人の数や態様は大きく変化していることを踏まえて、適用対象法人のあり方について、地域経済・企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行う。
・適正な記帳や帳簿保存が行われていない納税者については、適正な税務調査等の実行が困難であり、記帳義務の不履行や税務調査時の簿外経費の主張等に対する不利益がない中では、悪質な納税者を利するような事例も生じている。そこで、記帳義務の不履行の程度に応じて過少申告加算税等を加重する仕組みを設けるとともに、仮装・隠蔽が見られた場合には、主張された簿外経費については必要経費・損金に不算入とする措置を講ずる。

 

以下、具体的な税制改正大綱の内容です。(抜粋)

 

<所得税関連>

1.住宅ローン控除

住宅ローン控除の適用期限が4年延長され、令和7年12月31日までとされます。

住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率及び控除期間は次のとおり改正されます。

令和3年入居

(改正前)

令和4年・5年入居

(改正後)

令和6年・7年入居

(改正後)

一般住宅(※1) 控除対象借入限度額:4,000万円

控除率: 1.0%

控除期間:13年

控除対象借入限度額:3,000万円

控除率: 0.7%

控除期間:13年

控除対象借入限度額:2,000万円

控除率: 0.7%

控除期間:10年

(令和5年までに建築確認を受けたも野に限る)

省エネ基準適合住宅 (※2) 控除対象借入限度額:4,000万円

控除率: 0.7%

控除期間:13年

控除対象借入限度額:3,000万円

控除率: 0.7%

控除期間:13年

ZEH水準省エネ住宅(※2) 控除対象借入限度額:4,500万円

控除率: 0.7%

控除期間:13年

控除対象借入限度額:3,500万円

控除率: 0.7%

控除期間:13年

認定住宅(※2) 控除対象借入限度額:5,000万円

控除率: 1.0%

控除期間:13年

控除対象借入限度額:5,000万円

控除率: 0.7%

控除期間:13年

控除対象借入限度額:4,500万円

控除率: 0.7%

控除期間:13年

(※1)中古の場合、改正前は控除対象借入限度額2,000万円、控除率1.0%、控除期間10年、改正後は控除対象借入限度額2,000万円、控除率0.7%、控除期間10年

(※2)中古の場合、改正前は控除対象借入限度額2,000万円、控除率1.0%、控除期間10年、改正後は控除対象借入限度額3,000万円、控除率0.7%、控除期間10年

 

また、認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除(標準的な性能強化費用(650万円が限度)の10%について、居住年の所得税額から控除を受けられる制度)について適用期限が2年延長され、令和5年12月31日までとされます。また、ZEH水準省エネ住宅が対象に加えられます。

なお、所得税額から控除しきれない場合の住民税控除額の上限について、136,500円から97,500円に引き下げられます。

 

2.上場株式等に係る配当所得等の課税の特例

上場株式等の配当等で、その支払を受ける対象者及びその同族会社に該当する法人が保有する持株割合が、合計で3%以上となる場合にその対象者が支払を受けるものについて総合課税の対象とされます。従来は、対象者が保有する持株割合のみで判断されていましたが、同族会社に該当する法人を通じて3%以上保有している場合との不公平さから、そのような改正がなされることとなりました。

 

3.仮装隠蔽または無申告があった場合の簿外経費の必要経費の損金不算入

提出した確定申告書に仮装・隠ぺいが見られるか、または確定申告書がそもそも提出されていない場合には、以下の場合を除き必要経費として認められなくなります。

①帳簿書類などから経費の発生と金額の妥当性が明らかな場合

②反面調査等により、税務署長が経費の発生と金額の妥当性を認めた場合

対象は事業所得、不動産所得、山林所得または雑所得がある個人(雑所得がある者については前々年の収入が300万円超の者に限る)、および法人となります。

脱税を働いたり、無申告であるにもかかわらず簿外の経費を主張することは、不当に税務当局の事務負担を増大させるとの考えに基づく改正です。

 

<法人税関連>

1.中小企業における所得拡大促進税制(賃上げ税制)

以下の通り拡充が図られます。

改正前 改正後
適用要件 雇用者給与等支給額を前年より1.5%以上増加させること
税額控除(通常) 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%
税額控除(上乗せ) 以下の①及び②の要件を満たすことにより、10%上乗せされる

①雇用者給与等支給額を前年より2.5%以上増加させること

②教育訓練費を前年より10%以上増加させること、または、経営力向上計画の認定を受け、経営力向上がなされたこと

・雇用者給与等支給額を前年より2.5%以上増加させることにより、15%上乗せされる

・教育訓練費を前年より10%以上増加させることにより10%上乗せされる

 

よって、最大控除率は15%+15%+10%=40%となります(改正前は、15%+10%=25%)。

なお、通常・上乗せいずれの場合においても、税額控除額は法人税額の20%が上限とされます(改正前と改正後で変更なし)。

 

また、資本金1億円超の企業などの大企業・中堅企業については、以下の通りとなります。

改正前 改正後
適用要件 新規雇用者給与等支給額を前年より2%以上増加させること 継続雇用者給与等支給額を前年より3%以上増加させること
税額控除(通常) 新規雇用者給与等支給増加額の15% 雇用者給与等支給増加額の15%
税額控除(上乗せ) 教育訓練費を前年より20%以上増加させることにより5%上乗せされる ・継続雇用者給与等支給額を前年より4%以上増加させることにより、10%上乗せされる

・教育訓練費を前年より20%以上増加させることにより5%上乗せされる

よって、最大控除率は15%+10%+5%=30%となります(改正前は、15%+5%=20%)。

なお、中小企業向け賃上げ税制同様、通常・上乗せいずれの場合においても、税額控除額は法人税額の20%が上限とされます(改正前と改正後で変更なし)。

 

2.オープンイノベーション促進税制の拡充

一定の要件を満たすスタートアップ企業に対して出資した場合の課税の特例について、以下の見直しを行った上でその適用期限が2年間延長されます。

(1)スタートアップ企業の要件として、売上高に占める研究開発費の額の割合が10%以上の赤字会社にあっては、設立日から15年未満の企業が含まれるようになります(現行及び原則10年未満の企業)。

(2) 一定の要件を満たすスタートアップ企業の株式の売却等を行った場合に、益金算入される要件を満たす株式保有期間について、3年に短縮されます(現行は5年)。

 

3.貸付け用途の少額減価償却資産の損金算入制度の制限

貸付けの用途(主要な事業として行われるものは除く)で取得した場合には、以下の制度は不適用とされます。

①取得価額が10万円未満の減価償却資産の全額損金算入

②一括償却資産の3年均等償却

③1事業年度当たり300万円を上限として30万円未満の減価償却資産を即時償却できる制度(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)

いわゆる「ドローン節税」を封じ込めるための改正です。

 

4.グループ通算制度

①通算子会社の離脱時に子法人株式の帳簿価額とされるその通算子法人の簿価純資産価額に、その資産調整勘定等対応金額(子法人株式の取得価額のうち、その取得価額を合併対価としてその取得時にその通算子法人を被合併法人とする非適格合併を行うものとした場合に資産調整勘定または負債調整勘定として計算される金額に相当する金額(のれん相当金額))を加算することができる措置が講じられます。

②離脱等に伴う資産の時価評価について、時価評価資産から除外される資産から帳簿価額1,000万円未満の営業権を除外されます。

③利子税の額に相当する金額として各通算法人間で授受される金額は、益金不算入及び損金不算入の対象となる通算税効果額から除外されます。

 

<相続税・贈与税関連>

1.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置

適用期限が2年延長され、令和5年12月31日までとされます。

住宅取得等資金の贈与を受けて新築等をした場合、取得等に係る契約の締結時期にかかわらず非課税限度額は以下の通りとなります。

①耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅用家屋 1,000万円

②上記以外の住宅用家屋 500万円

住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合について、現行制度における非課税限度額は以下の通りです。

①耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅用家屋 1,500万円

②上記以外の住宅用家屋 1,000万円

受贈者の年齢要件が18歳以上(現行は20歳以上)に引き下げられます。

 

2.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度

特例承継計画の提出期限が1年延長され、現行の令和5年3月31日から令和6年3月31日とされます。

 

<消費税関連>

1.インボイス制度の登録に関する見直し

経過措置として、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中にインボイス発行事業者の登録を受ける場合は、その登録日からインボイス発行事業者になることができます。改正前は、令和5年10月1日の属する課税期間中にインボイス発行事業者の登録を受ける場合にのみ経過措置の適用が可能となっておりました。

 

2.仕入明細書による仕入税額控除の適用要件の見直し

仕入明細書等による仕入税額控除は、その課税仕入れが他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当する場合に限り行うことができるものとされます。

 

<その他>

1.電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度についての宥恕措置

令和3年度の電子帳簿保存法改正において定められた電子保存の義務化について、2年間(2022年1月1日~2023年12月31日)の猶予期間が設けられます。具体的には、所轄税務署長が電子データ保存ができないことについて、やむを得ない事情があると認め、かつ税務職員の質問検査権に基づく書面での提示または提出の求めに応じることができるようにしている場合には、紙での保存が許容されます。

所轄税務署長への手続を要せず、紙保存が可能となる予定です。

 

2.帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の整備

帳簿の提出がない場合等において、以下の通り罰則が強化されます。

不備の程度 罰則
帳簿の提示または提出を行わなかった場合

・売上(収入)に関する帳簿の記載が著しく不十分(※1)である場合

過少申告加算税、無申告加算税を10%上乗せ
・売上(収入)に関する帳簿の記載が不十分(※2)である場合 過少申告加算税、無申告加算税が5上乗せ

※1 「著しく不十分」とは、売上(収入)のうち2分の1以上が記載されていない場合をいいます。

※2 「不十分」とは、売上(収入)のうち3分の1以上が記載されていない場合をいいます。

 

3.仮装・隠ぺいまたは無申告の場合の経費の損金不算入措置

提出した確定申告書に仮装・隠ぺいが見られるか、または無申告の場合には、以下の場合を除き、事後的に主張された経費は損金の額に算入されない措置が講じられます。

①帳簿書類などから経費の発生と金額の妥当性が明らかな場合

②反面調査等により、税務署長が経費の発生と金額の妥当性を認めた場合

対象は事業所得、不動産所得、山林所得または雑所得がある個人(雑所得がある者については前々年の収入が300万円超の者に限る)、および法人となります。

 

4.上場株式等の配当所得等に係る課税方式

現行制度では、上場株式等の配当所得等の課税方法については、所得税及び個人住民税において異なる課税方式の選択が可能となっておりますが、改正後は一致させることとなります。

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