優越的地位の濫用

銀行との取引の中で覚えておいた方が良いことの一つとして、優越的地位の乱用です。優越的地位の濫用とは、取引上、優越的地位にある者が、取引先に対して不当に不利益を与える行為であり、独占禁止法によって禁止されています。

融資取引において銀行は資金を企業に融通していますが、ある意味、企業の資金繰りを握っており、この点で優越的地位に立っているといえます。

 

例えば、資金繰りが厳しい状態で運転資金の追加融資の申し込みを検討している段階で、銀行から社長の奥さんに対して投資信託の購入を強く営業してきた場合断れるでしょうか。また、例え銀行員に強要の意思がなくとも、社長の立場として一貫して断ることは難しい状況です。 

 

このように融資の可否をちらつかせながら、他の取引を事実上強要するようなことは優越的地位の濫用にあたります。さらに言えば、たとえ他の取引に応じたとしても融資の審査が100%通るとも限りません。

 

このような状況では、キッパリ断ることが重要です。断りづらければ、顧問税理士に同席してもらい税理士から断りを入れるという方法もあるでしょう。

 

一方で最近は、銀行もコンプライアンスの順守に力を入れています。融資先に金融商品の提案を行う際には、優越的地位の濫用に抵触しないよう本部に申請をして許可を得てから営業を行うといったような内部規定を設けているところもあり、以前のようなあからさまな優越的地位の濫用は少なくなってきています。

 

また、銀行員も厳しいノルマがありますので、年会費の安いクレジットカード程度であれば、例えば若手の行員のノルマに付き合ってあげることで、その若手行員も自社に対して一生懸命になってくれたり、良好な取引関係を作るきっかけになることもあると思います。そう考えれば安い投資ではないでしょうか。