合同会社設立のメリットとデメリット

合同会社を設立するメリットとしては、1つ目は株式会社と同様に信用力が増すという点です。中小企業庁の中小企業白書によると個人事業主が法人化した動機の1番として信用力が上がるためと回答しているように、株式会社同様法人化することで個人事業主と比べ、取引面、融資面、雇用面でのアドバンテージを得やすいとされています。なお、信用力の大きさという面で、周知度などは株式会社に劣りますが、商工中金は「法人格がある合同会社は、信用力の面で株式会社と大差ない」と評価しており、また大手外資のAppleやウォルマートの日本法人が合同会社形態をとっているなど、徐々に数も知名度も増してきています。

 

 

メリットの2つ目として、持分会社ながら社員全員が有限責任社員から構成され、すなわち全員が有限責任なので出資側のリスクが小さくなります。このメリットについては株式会社の株主が有限責任であるメリットとまったく同様の内容になりますが、原則、倒産したとしても出資金額以上の責任を負わないため安心して出資することが出来ます。一方、株式会社と違い注意しなければならない点もあります。合同会社において出資者である社員は原則、同時に業務執行社員(株式会社における取締役に相当)でもあるため、会社や第三者に損害を与えたときに、場合によっては役員としての損害賠償責任を無限に追う可能性もあります。

 

メリットの3つ目として、こちらも株式会社のケースと同様ですが、ある程度の利益がでてくると、累進課税による個人としての所得税負担よりも法人化することで一定税率である法人税の負担の方が軽くなり節税効果が見込めます。また、役員給与として費用計上できかつ、個人の所得税においても給与所得控除の部分は課税されないため個人事業主よりもお得になります。

 

メリットの4つ目として、株式会社に比べ安く早く設立できるという点です。株式会社も合同会社も定款の作成が必要なのは共通ですが、株式会社は公証人による定款の認証が必要なのに対し、合同会社は作成さえすればよいのです。よって認証手数料もかかりませんし日数もその分少なくなります。またその他の費用も安いため、合同会社の設立費用は株式会社の設立費用のおおむね半額で設立することが可能となっています。

 

メリットの5つ目は、定款の定めによって柔軟な組織運営などが可能ということです。例えば株式会社は原則として所有と経営が分離されているため最低でも取締役と株主総会の設置が義務付けられ、さらに規模などに応じて取締役会、監査役、監査役会、会計監査人などの機関の設置が義務付けられています。そのため組織が複雑化し迅速な意思決定などが妨げられる可能性があります。一方で合同会社は所有と経営が一致しており、したがって原則として株式会社でいうところの「取締役=株主」の関係あるため株主総会に相当する社員総会の設置は義務付けられていません。このように株式会社の仕組みを簡素化させた側面もあり、柔軟な定款自治や経営が可能となるのです。

 

一方で合同会社設立のデメリットとしては、株式会社同様大きなデメリットはありませんが、設立費用が掛かる点、個人事業に比べ利益の自由な処分が制限される点です。また株式会社に比べると、合同会社は人的つながりを重視するため社員の流動性は相対的に少なく、証券市場に上場もできないため、単体で大規模な資金調達は難しいといえます。ただし、株式会社への組織変更も可能なため、最初は合同会社として設立し、ある程度の規模になれば株式会社に組織変更することで大規模な資金調達も可能になります。