キャッシュフローの重要性①

事業を行う上で、儲けること、すなわち利益を生み出すことが重要な目的の一つになります。ただし、究極的には投資した実際の資金(現金)よりも大きな金額の資金(現金)を回収することが目的と言ってもよいと思います。

 「黒字倒産」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。黒字倒産とは、会社は黒字であり、損益計算書上はちゃんと利益が計上されているにもかかわらず、倒産してしまうことを指します。実は倒産する企業の半分弱はこの黒字倒産であるとも言われています。
一方で、赤字が続いているけど倒産しそうにないという会社もあります。
 また「倒産」とは正式な明確に定義のある用語ではありませんが、一般的には「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」を指すようです。

では、なぜ黒字倒産のようなことが起きるかというと。損益計算書の収益と費用の認識基準に起因しています。
 例えば、収入も費用もすべて現金での取引を基準に認識しているのであれば、商品の仕入れ代金を支払ったときに売上原価を計上し、現金を受け取ったときに売上計上します。また経費についても、現金の支出があって時に販管費として計上します。

このような、認識基準(現金主義)のもとでは、「損益計算書=実際の資金の流れ」流れになりますが、別の弊害が生じます。極端な話ですが、初年度に向こう10年分の在庫を現金で仕入れたすると10年分の在庫の現金支出により、すべて初年度の売上原価になってしまい次年度以降の売上原価が計上されないことになってしまいます。また、家賃等を数年分前払いしたときも同じことが起こります。よって現金主義の下では、適正な期間の利益計算が歪められてしまうため、現在は、実際の現金の収入や支出に関係なく、経済的事象や取引発生の事実があれば、その期に発生した収入、費用として計上するという、発生主義という考えに立っています。

 このように、発生主義会計の下では、商品を売上ることで収益を認識するが、売掛金をまだ回収していないため現金としては回収できていないという現象が起こります。すなわち、損益計算書と実際の現金の動きがマッチしないため、業績が拡大し、利益としては黒字であっても、その分必要な運転資金が増加しているにも関わらず、手元に現金がないため手形の支払い日に、当座預金の残高不足で不渡りを出してしまうなど、いわゆる資金ショートにより黒字倒産が発生してしまいます。また、一方でいくら赤字を垂れ流しであっても現金さえあれば会社は倒産しないのです。
 
 よって、経営者は利益でだけでなく、実際のお金の流れ(キャッシュフロー)の管理も常に念頭に置いて会社経営に臨む必要があります。