クリニックでは消費税は原則課税と簡易課税のいずれが有利か

クリニックにおいて、ある程度自由診療を行っていれば消費税の負担は重く感じるかもしれません。消費税は、基準期間(2期前の事業年度のこと)の課税売上高(自由診療収入等の1年間の合計)が1,000万円を超える場合には課税事業者となり、納税しなければなりません。

消費税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合には、以下の2通りの計算方法を選択することができます。
一つは「原則課税」で、預かった消費税(自由診療収入等に含まれる消費税)から支払った消費税(医薬品、消耗品等に含まれる消費税)を差し引いて計算する方法です。差し引くことができる消費税は課税売上割合(保険診療収入を含む総収入に占める課税売上の割合)を元に計算された一定額に限られます。計算が煩雑というデメリットがあります。
なお、差し引くことができる消費税の金額は「控除対象仕入税額」といいます。

もう一つは「簡易課税」と呼ばれる方法で、上記の控除対象仕入税額が、預かった消費税のうちあらかじめ定められた一定の割合であるとみなして計算する方法です。医業ではその割合は50%となります(この50%のことを「みなし仕入率」といいます)。よって、1年間の自由診療収入が1,080万円だった場合、預かった消費税である80万円からその50%である40万円を控除した金額、すなわち40万円を納税する消費税として計算する方法です。原則課税と比べて計算が簡単です。

なお、簡易課税を選択したい場合は、前事業年度の末日までに届出を行わなければなりません。

では、クリニックでは原則課税と簡易課税のいずれが有利となるのでしょうか。
判定の際には、実際の両者の控除対象仕入税額を計算して比較することになりますが、一般論としてはクリニックの場合、簡易課税の方が有利となることが多いです。これは、クリニックは経費に占める人件費の割合が多く、人件費は消費税を含まない経費(「非課税仕入」といいます)だからです。
ただし、高額の医療機器などの購入、設備投資を予定している場合は、原則課税の方が有利となることがあります。これは医療機器の購入、設備投資は消費税がかかってきてしまう「課税仕入」であるためです。
よって、事業年度開始前に毎期、上記のような判定を行うことが消費税の節税につながります。