医療機関の主な税務調査項目

医療機関に税務調査が入った場合に、どの項目が見られやすいのでしょうか。以下、いくつかピックアップしたいと思います。

1.医業収入
支払審査機関からの振込みによる保険収入は、税務署が容易に把握でき、ごまかしが難しいためあまり見られることはありません。一方、窓口収入(患者の自己負担分)については現金収入となりますので、操作も容易であることから、見られることも多いです。具体的には、窓口収入の流れを確認され、レジロールと収入計上額のサンプルチェックなどが行われます。誤りも多い部分であり、細かく見られることがあります。
また、自由診療収入については、支払審査機関は絡まないので、総収入に占める割合が高ければ重点的に調査されることもあります。
さらに、収入の期ズレについてもよく見られます。医業収入は、基本的には医療行為があった日をもって計上しなければなりませんが、医療行為後、入金がかなり遅くなるものもあり(例えば医師会からの委託業務など)、金額が把握できないことから医療行為があった日に計上されていないケースが多いです。その場合、医療行為があった日と入金日が違う会計期間であれば、いわゆる期ズレとして修正を要求されることになります。

2.医薬品等の在庫(棚卸資産)
今では多くの医療機関が院外処方となっていることから、医薬品在庫は以前と比較すると少なくなっているかと思いますが、計上漏れが多い項目であるためよく見られます。
現にストックしてある在庫の確認のみならず、決算日前数か月間の医薬品の仕入状況を納品書などで確認し、在庫リストと見比べ不自然な点がないか確認されます。
特に期末日付近で仕入れた金額の高い医薬品が在庫に計上されていない場合は、計上漏れの可能性が疑われます。

3.交際費
医療機関でなくても交際費は重点調査項目となりやすいです。特に、ドクターは交友関係が広い方が多く、交際費の金額も多額になりやすい傾向にあるため多くの時間が割かれる可能性があります。
具体的には、業務遂行上必要な経費として帳簿上計上していたとしても、個人的な支出と判断される場合(例えば趣味に関する支出、仕事上の付き合いのない友人との食事など)、否認され、修正申告が求められます。
交際費については、領収書に同席者、人数、目的等をきちんと記載し、経費性を説明できるようにしなければなりません。

4.専従者給与
専従者給与、特に配偶者に対する給与はよく見られます。青色事業専従者給与は支払った分が経費として認められることから、多くを計上しがちです。その場合、専従者の労働の実態を詳しく聞かれ、労働の対価とは認められず、単なる生活費の支給と判断されればその部分は否認されることになります。
労働の対価および同じような仕事で支払われている給与の相場を考慮して、専従者給与の金額は決めなければなりません。

税務調査に備え、上記項目については日頃からきちんと対応することをお勧めします。