医業経営における事業承継

2006年(平成18年)の第5次医療法改正により、2007年4月1日以降申請される医療法人は、いわゆる「持分なし医療法人」となりました。

「持分なし医療法人」は少しわかりづらいのですが、医療法人の社員(株式会社でいうところの株主)であっても、医療法人の財産に対する権利を主張することができず、医療法人を解散した場合には残った財産は国や地方自治体に帰属してしまうというものです。

これに対し、以前の「持分あり医療法人」の場合、持分の概念があり、医療法人の財産に対する権利を主張することができます。よって、例えばM&Aを行う場合には、医療法人の価値を評価して、持分価値が測定され、その金額が買い手から売り手に支払われることとなります。

このように、直観的には改正後の持分なし医療法人は財産を没収されるイメージはありますが、事業承継上のメリットはあります。以前の持分あり医療法人だと、医療法人に蓄積された財産は配当もできず、出資者(社員)の持分(出資金)の評価が膨れ上がり、相続の際には多額の相続税が課せられることがありました。一方で、持分なし医療法人だと持分の概念がないためそのような問題はなく、スムーズな事業承継ができるようになりました。

さらに、早いうちから将来相続人となる子を医療法人の役員・職員として参加させて、役員報酬・給与を支給すれば、実質的な生前贈与を行うことにもなります。

以上から、持分あり医療法人、持分なし医療法人それぞれの性質を踏まえた事業承継策を練っていく必要があるといえます。