医療法人と同族会社

税法上、いわゆる「同族会社※」に分類された場合には、以下の特別の規定が適用されることになります。
※同族会社とは、3人以下の株主及びその特殊な関係にある個人及び法人により、議決権の過半数が保有されている会社などをいいます。

①みなし役員の規定
税法上、役員に対する給与は、一定の場合のみ損金算入が認めらますが、使用人に対する給与は原則としてそのような制限はありません。しかし、一定の議決権を保有し、その会社の経営に従事している者は、使用人であっても役員とみなされます。
みなし役員とされた使用人に対する給与は、上記の制限の対象となります。

②行為または計算の否認
租税回避を防ぐための規定で、一定の行為が認められた場合には、それ自体が否認され、税務署長の権限で税額を計算できるというものです。
伝家の宝刀といわれている規定ですが、適用事例としてはそれほど多くはありません。

③特定同族会社の留保金課税
同族会社は、経営者(役員)=株主であることが多く、(自分へ)配当を行うと税金を支払わなければならないことから、あえて配当をせず、会社に利益を溜め込むということが行われやすいといえます。そのようなことを制限するために、利益の社内留保額が一定以上となる場合には、通常の法人税に上乗せして課税される規定が置かれています。

ここで、医療法人は「会社」ではないので、同族会社には該当しません。
よって、基本的には上記①~③の適用はなさそうにも思えます。ただし、②については過去の判例で適用されたケースがあります。
さらに、以下のイ~ロの要件をすべて満たす場合には、医療法人であっても行為または計算の否認の対象となります。
イ.3以上の事業所を有すること
ロ.その事業所の2分の1以上について、その事業所の院長等その他事業主催者またはその親族等が、以前個人として事業を営んでいたこと
ハ.ロに該当する院長等が有する医療法人の出資の数または出資金額の合計が、出資総数または総額の3分の2以上であること

以上より、医療法人であっても、租税回避行為については制限されているととらえなければなりません。